現代日本画名品選、足立美術館

足立美術館では、日本美術の発展と将来性ある日本画家を育成する一助になればという思いから、平成7年(1995)より「足立美術館賞」を創設しました。これは、毎年開催される日本美術院展覧会(院展)の中から、優秀かつ当館にふさわしい作品を1点選考し、同時に買い上げを行うものです。本展では、新館1階展示室において、足立美術館賞受賞作をはじめ、歴代の受賞画家たちの作品をご紹介いたします。

また、2階展示室では、日本美術院の同人(正会員)たちの名作を一堂に展示いたします。院展の顔ともいえる画家たちの魅力をご堪能ください。

足立美術館は、近代日本画壇で活躍した画家たちの作品を中心に、総数1500点を所蔵しています。その中には横山大観や竹内栖鳳、上村松園といった、日本画壇を創り上げてきた巨匠として知られる画家たちの作品が多数あります。しかし、所蔵品は大観ら有名な画家ばかりではありません。かつては国内外で高い評価と人気を得ていながら、現在では忘れ去られた画家、名前は知られていなくてもある分野において活躍した画家など、知る人ぞ知る画家たちの力作、代表作も多く所蔵しています。さらに、有名な画家であっても、一般に知られている印象とは異なる珍しい作品や、展覧会で展示される機会は少ないながらも魅力的な作品もあります。

足立全康の蒐集への情熱は定評のあるところですが、中でも一番思い出深い出来事といえば、昭和54年に北沢コレクションの「紅葉(こうよう)」「雨霽る(あめはる)」「海潮四題・夏」をはじめとする大観の作品群を一括購入したことでしょう。昭和53年に名古屋の横山大観展で見た「紅葉」(六曲一双屏風)に言葉も出ないほどの感動を受け、何が何でも手に入れるのだと八方手を尽くしたところ、門外不出の「幻のコレクション」といわれた北沢コレクションの一部とわかりました。当時、管財人の手元にあり、その中には大観の作品が、「紅葉」以外に20点近くもあり、そのほとんどが展覧会出品作だったのです。さらに驚いたことには、長い間、画集から切り抜いて額に入れ毎日飽きもせず眺め続け、夢にまで見た「雨霽る」が含まれていたのです。苦労の末、2年がかりで全ての大観の話がまとまりかけたところ、購入リストから「雨霽る」と「海潮四題・夏」をはずしてくれと言われました。これは黙ってはおれないと「一目惚れの女性に2年も通い続けて枕金も決め、さあ床入りという時に、枕をかかえて逃げられるようなもんだ。そりゃあんまりじゃないですか」と管財委員会の前で一席ぶち、泣き落とすようにして最後は当館に決めてもらったといいます。

所蔵品のほとんどは、創設者・足立全康の眼によって厳選されたものです。作家や作品を選択する上で、特定の流派や傾向に偏らず、実に幅広い蒐集を行っていることが特色といえるでしょう。本格的な日本画蒐集は昭和32年頃から始まったものですが、平成2年に亡くなるまで、コレクターの執念ともいえる情熱は決して衰えることがありませんでした。

そして現在でも、足立コレクションの基本を踏まえながら内容の充実に努めており、これらの作品は、庭園の四季の変化とともにお楽しみいただけるよう、年4回の特別展を開催し、本館(大観室・大展示室・小展示室)において、常時70点前後の作品を公開しています。