浮世絵、東京富士美術館

葛飾北斎の《冨嶽三十六景》(前期展示)と歌川広重の《東海道五十三次》(後期展示)は、浮世絵を代表する風景版画ですが、江戸では、それ以外にも、美人画、役者絵など多くのジャンルの浮世絵が出版されていました。いっぽう西の大阪では歌舞伎ファンを顧客とした役者絵が浮世絵の主要画題となっていました。本展では、歌川国芳の新収蔵作品を含め、当館が所蔵する浮世絵コレクションから30作家の約250点を、前期・後期に分けて展観し、東西の浮世絵の世界を楽しんで頂きます。

浮世絵には元来、木版画、絵画(肉筆画)のものがある。絵画つまり肉筆画は一点ものであり、名のある絵師によるものは高価であった。これに対して、木版画は版画であるために、同じ絵柄のものを多く摺り上げることができ安価で、江戸時代の一般大衆もたやすく求められた。また有力者や大名などのコレクションが、現代の有数のコレクションに引き継がれているという見方もある。

浮世絵版画は大衆文化の一部であり、手に取って眺め愛玩された。現代の美術展等のように額に入れて遠目に眺めるものではなかった。草双紙や絵巻物、また瓦版(新聞)の挿絵の役割も果たした。絵暦と呼ばれるカレンダーの制作も行われ、絵の中に数字を隠すなど様々な工夫を凝らしたものが作られた。江戸から国元への土産にも、その美しさと嵩の低さが喜ばれた。玩具絵のように切り抜いて遊ぶものもある。

葛飾 北斎は、江戸時代後期の浮世絵師。化政文化を代表する一人。代表作に『富嶽三十六景』や『北斎漫画』があり、世界的にも著名な画家である。

歌川 広重は、江戸時代の浮世絵師。本名は安藤重右衛門。江戸の定火消しの安藤家に生まれ家督を継ぎ、その後に浮世絵師となった。ゴッホやモネなどの画家に影響を与え、世界的に著名な画家である。

はっきりした図柄と大胆な構図、影の表現を持たないこと等が表現上の特徴である。遠近法も取り入れられた。遠景の人物を逆に大きく描く北斎の『釣の名人』のように、意図的に遠近をずらされたものもある。

また、絵師による誇張や意図などを考慮する必要はあるが、描かれている風景や現在では変化・消失した名所、人々の生活や生業、文化などを伝える歴史資料としても活用されている。

東京富士美術館

公益財団法人東京富士美術館(とうきょうふじびじゅつかん)は、東京都八王子市にある美術館である。

1983年11月3日開館。「世界を語る美術館」をモットーに、西洋・東洋の様々な芸術作品(絵画、彫刻、版画など)約3万点を所蔵している。なかでもルネサンスから現代にいたる西洋絵画500年の流れを概観することを可能にする名作およそ100点は常設展示されている。さらに、特定のテーマのもとに当館所蔵品や世界各国の美術館からの貸出品を展示する企画展、また世界各国の文化を紹介する海外交流展なども随時開催している。2008年には新館がオープンした。

自然や人間を愛する心、美を追い求める心で世界の人々を結びたい。東京富士美術館設立への創立者の思いは、次第に形になっていきます。

人間の精神の粋を集めた芸術はまた、人と人のこころを繋ぎます。東京富士美術館は世界各国の優れた文化を新しい視点から紹介する海外文化交流特別展を国内外で活発に開催してきました。

世界を結ぶ文化の架け橋として、東京富士美術館はこれからも様々な活動を続けていきたいと考えています。

Google MapsとGoogleアート&カルチャープロジェクトによる仮想展示コンテンツの提供