桃山~江戸時代屏風絵、東京国立博物館

屏風絵は古代から近世にかけて、唐絵や、日本画でも大和絵、水墨画、文人画など多くの屏風絵が描かれた。また安土桃山時代から江戸時代にかけて、城郭には必ずといっていいほど屏風が置かれ、それによって屏風絵は芸術としてその地位を高めていった。その時代の有名な絵師としては、狩野永徳らが挙げられる。日本画の屏風の場合、季節の変化をつけることが多く、その場合向かって右から左へ季節が移り変わっていく。屏風絵は画集などでは完全に広げた状態で載っていることが多いが、そもそも屏風は折った状態で鑑賞することを前提で制作されており、折ることで絵に立体感が生まれ、さらに正面から見るだけでなく左右に視点を変えることで絵に変化が生まれ、鑑賞者が様々に楽しめるように工夫されている。安土桃山時代の風俗画などに描かれた屏風を見ると、周囲を丸く囲い込んだり不規則に折った状態で設置されたりと、その時の必要に応じて自由に取り回して使ったことがわかる。

日中の屏風絵は西欧に渡ったり、影響を与えたりした。戦国時代から江戸時代初期に行われた南蛮貿易を通じて海外に渡った日本の屏風絵は、ポルトガル語やスペイン語で「ビオンボ」と呼ばれた。

室内を仕切ることにより場を作り出し、空間を演出する機能をもつ屏風や襖には、権力を象徴し、場を荘厳するなどの目的のために、絵が描かれたり、書が揮毫されたりしました。ここでは安土桃山時代から江戸時代の屏風を展示し、これら大画面の作品によって生み出される空間の効果を感じ取っていただきます。

今回は残暑厳しい時期にあわせて、秋の風情を感じさせる主題や、秋草などのモチーフを描いた作品を展示します。

展示作品
国宝 観楓図屏風 狩野秀頼筆 室町~安土桃山時代・16世紀

吹く風がふと冷たくなり、心地よかった秋涼もすっかり肌寒く感じられるようになりました。
深まる秋の景色は厳しい冬へと向かう寂しさを感じさせます。
そのようななか、北から徐々に色づき、山々を紅と黄金に染める紅葉は、私たちの心を晴れやかで明るい気持ちにさせてくれるものです…。

観楓図屏風にはそうした秋の日に、紅葉狩りを楽しむ人々の姿が描かれています。

画面右上の雲間にみえる伽藍が神護寺のものとするならば、ここは京の洛北、紅葉で名高い高雄でしょうか…。そうであれば、群青の川の流れは清滝川でしょう。遠く銀雪をたたえた愛宕社が早くも冬の到来を告げています。

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この屏風では、寺社や名所を舞台とすることで、神仏への祈りとともに季節の移ろいを描く「四季名所絵」の伝統が踏まえられています。おそらく右隻にあたる「春夏」の一隻がかつて存在したことを思わせます。

また、この屏風は「四季名所絵」であるとともに、当時の人々の姿を丹念に描き込んでおり、「野外遊楽図」のもっとも古い作例とも位置づけられています。

そこに描かれた人々は、平和を謳歌し、輝くような魅力を放っています。

この屏風をみつめると、川のせせらぎ、人々の歓びの笑い声、橋上の笛の音などが聞こえてくるようです…。

東京国立博物館

東京国立博物館は、わが国の総合的な博物館として日本を中心に広く東洋諸地域にわたる文化財を収集・保管して公衆の観覧に供するとともに、これに関連する調査研究および教育普及事業等を行うことにより、貴重な国民的財産である文化財の保存および活用を図ることを目的としています。

平成19年4月1日からは、東京国立博物館の所属する独立行政法人国立博物館と独立行政法人文化財研究所が統合され「独立行政法人国立文化財機構」が発足しました。新法人のもと貴重な国民的財産である文化財の保存及び活用を、より一層効率的かつ効果的に推進していきます。

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