世界をさぐる、日本科学未来館

Originally posted 2020-01-17 09:03:04.

私たちはなぜ今、ここに存在しているのでしょう?

宇宙、地球環境、そしてそのなかで育まれる生命など、私たちをとりまく“世界”のしくみを、さまざまなスケールでさぐるゾーンです。

宇宙
ニュートリノの観測
目にはみえない素粒子、ニュートリノをどのようにして観測するのでしょうか? 観測装置の模型で、その様子を知ることができる展示です。

岐阜県・神岡の地下 1,000m にある「スーパーカミオカンデ」は、ニュートリノを観測する装置です。このスーパーカミオカンデの10分の1の模型を展示しています。模型の中に入って、ニュートリノをとらえるセンサーが壁や床にずらりと並んだ様子を体験できます。 また、放射線の通った道が煙のような線となって現れる「霧箱」と呼ばれる装置では、現れては消える放射線の痕跡をその目で観察することができます。 日本はニュートリノを観測する研究で世界をリードし、ノーベル物理学賞受賞(2002年小柴昌俊氏、2015年梶田隆章氏)にもつながっています。

加速器で探る素粒子と宇宙
私たちがいる世界の成り立ちとは?その問いに科学がどのような答えを示しているか見てみましょう。

物は何からできているのでしょうか?人類はそんな素朴な好奇心から生まれた問いを追い求めてきました。この展示では、粒子加速器という巨大な実験装置を使って素粒子の謎に迫る研究を紹介しています。粒子加速器の内部では、物質を構成する陽子などの粒子を、光の速度近くまで加速して衝突させることで、未知の素粒子をつくり出そうとしています。展示では、このスケールの大きな実験を、アニメーションや写真、体験ゲームなどで紹介しています。

こちら、国際宇宙ステーション
宇宙飛行士たちの実験や暮らしを紹介しながら 人類が宇宙を目指す意味を考える展示です。

地上から高度 400kmに浮かぶ国際宇宙ステーション(ISS)は、地球を約 90 分で一周するスピードで移動しながら、実験、研究、地球や天体の観測を行っています。ISSは本来ヒトが生きることができない宇宙環境への挑戦であり、世界各国の研究者、宇宙飛行士、地上で運用管制を行なうスタッフたちが協力しながら運用されています。展示では、宇宙居住棟の模型の中に入り、宇宙での暮らしやそこで行われている研究成果を見ることができます。

地球

100億人でサバイバル
現代に生きる私たちを脅かす災害を理解し、どう向き合ったらよいか考える展示です。

地震や噴火などの自然災害は、私たちの暮らしに大きな被害を与えてきました。さらに、科学技術や移動手段が発達した現代では、感染症の拡大、異常気象の増加、原発事故など、思いもよらなかった新たな災害もうまれています。この展示では、さまざまな災害が起こるしくみやその被害を理解することができます。21世紀の地球に生きる私たちが、この地球で生き延びていくために、今、何をすべきなのか、いっしょに考えてみましょう。

地球環境とわたし
「循環」の視点から地球環境と「わたし」の関係性をとらえ直し、未来のための選択を考える展示です。

地球が誕生してから46億年。その歴史の中で、最近の 1 万年は “奇跡 “といわれています。例外的に安定した気候が続いたこの期間に、人類は文明を飛躍的に発展させてきました。ところが今、私たちは自らの手で、この恵まれた地球の環境を壊そうとしています。展示では、地球上のあらゆる生命の活動を支えている「循環」という地球のしくみに着目し、循環するものづくりや、循環を乱さないエネルギーの実現方法などを紹介しながら、未来の社会のあり方を考えていきます。

生命

細胞たち研究開発中
iPS細胞など現在進行形の研究や、生命の基本単位である細胞の原理やしくみを幅広く知り、新しい「細胞」とのつきあい方について考えてみましょう。

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iPS細胞をはじめとした幹細胞研究が目覚ましい発展をする中、一人ひとりが、細胞レベルから自分の体について選択したり、判断したりする時代を迎えつつあります。展示の中心となる5つのシアターでは、誰にでも起こりうる病気や怪我に直面する場面が描かれています。そこであなたはiPS 細胞による治療という選択肢と向き合い、選択する可能性を考えます。また、細胞の原理や仕組みを紹介するコーナーでは、自分自身が、細胞からなり、細胞によって生かされていることが実感できます。

ぼくとみんなとそしてきみー未来をつくりだすちから
生き物のなかで、人間だけがもつ性質とはなんでしょうか。人間の脳の働きや生物としての性質を探ります。

絵本の中に入り込んだようなしかけを通じて、人間の脳のしくみや社会との関わり合いを学ぶことができる展示です。私たちは社会をつくる中で、困っているときに 自発的に協力し合ったり、言葉を使って多くの人と情報をわかち合ったりする方法を手に入れました。あなたは、身のまわりの人とどんな関係性を築いていますか?他者と関わりをもってしまう人間の性質に気づき、自分のまわりの人との関係性をこの展示でとらえ直してみましょう。

ともに進める医療
私たちはどのように生きて、どんな医療を受けたいか、 次世代の医療を知ることで、ともに考えてみましょう。

画像診断技術の発展や、一人ひとりの体質にあった患者に負担の少ない治療法、病気を防ぐ医療などを紹介し、医療の将来像をみなさんとともに考える展示です。もし病気になったとき、あなたならどんな治療法を選ぶのでしょうか? 未来の医療では、医師などの専門家とともに、自分自身が病気を理解し、治療法を選択することがもっと身近になるかもしれません。

ラボ

フロンティアラボ
宇宙や地球の解明に挑む現在進行形の研究を紹介する空間です。人類の果てしない探究心に触れることができます。

人類の探究心は深海など地球の深部、さらには太陽系やはるか遠い宇宙へと限りなく拡がってきました。ここでは、「地球の深部に挑む」、「太陽系に挑む」、そして「深宇宙に挑む」の3コーナーで、挑戦を続けるフロンティア研究の最前線を紹介します。

2018年6月には、南米チリのアタカマ砂漠に建設されたアルマ望遠鏡のプロジェクトや成果などを紹介する新展示を追加。このほか、金星探査機「あかつき」、世界最高の掘削能力をもつ地球深部探査船「ちきゅう」の模型、H-IIAロケットのメインエンジンの実物、極限環境で生きる深海生物「ユノハナガニ」などの展示物が並びます。

日本科学未来館
日本科学未来館は、いま世界に起きていることを科学の視点から理解し、私たちがこれからどんな未来をつくっていくかをともに考え、語り合う場です。

展示をはじめ、トークセッション、ワークショップなど多彩なメニューを通し、日々の素朴な疑問から最新テクノロジー、地球環境、宇宙の探求、生命の不思議まで、さまざまなスケールで現在進行形の科学技術を体験いただけます。

日本科学未来館は、科学技術を「人類の知恵」のひとつ、つまり「文化」のひとつとしてとらえ、語り合う場として2001年に開館しました。一般の人々と専門家がともに科学技術の役割や可能性を考え、一緒に将来社会を描けるように、すべての常設展示を第一線の研究者・技術者とともに作り上げ、表現しています。また、文化としての科学技術をよりよく理解してもらうために、多くの外部組織と協力し連携しながら、さまざまな手法を用いた企画展を開催しています。

もう一つ重要視しているのは、社会の多様な人々と科学技術をつなげ、未来の社会を共に作り上げる科学コミュニケーター人材の養成です。科学技術に関する対話の創出、あらゆる立場の人々との館の中にとどまらない協働など、日々の科学コミュニケーション活動の実践を通じて、継続的に人材の育成・輩出を行っています。

さらに、世界の科学館の中でも非常にユニークな存在である研究エリアを設けているのも大きな特色です。展示場の廊下を隔てた研究エリアでは研究者たちが多岐にわたる分野で世界を相手にしのぎを削っている先端研究現場を垣間見ることができます。研究者たちは自身の研究活動を社会に理解してもらうために、当館スタッフと協力してイベントや実証実験、科学コミュニケーション活動も積極的に行っています。

世界に開かれた科学コミュニケーション拠点として、科学技術の役割を問い続け、あらゆる分野の「知恵」を集めグローバルな人類の将来社会に貢献できるよう活動して行きたいと思います。

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