近代日本画の動物、山種美術館

日本人は古くから動物や鳥、虫など、生命(いのち)ある「いきもの」たちに魅了され、その姿を描いてきました。中国から伝わった花鳥画以外にも、仏教絵画での神聖なる象や獅子、伝説上の麒麟(きりん)や鳳竹内栖鳳 艶陽凰(ほうおう)、禅宗における龍虎(りゅうこ)図など、日本画における動物たちは時に宗教や信仰とも密接に関わりを持っていました。一方、近代日本画における動物たちは、こうした伝統をふまえながらも、より写実的に描かれ、作家の視線が感じられる個性的な姿として自由に表現されるようになります。

子犬、うさぎ、猫や、猿、牛などの哺乳類や、孔雀、鶺鴒(せきれい)、鷺などの優美な鳥たち。そして、蝶やカミキリ虫、鯉、蛇、蛙などの虫、魚、爬虫類(はちゅうるい)や両生類―。「いきもの」と一言で言っても、その種類は実に様々で、それぞれの生命の輝きに満ちています。

しんとした空気の中にひっそり佇む山口華楊《木精(こだま)》のみみずくや、真っ白な羽が凛として美しい上村松篁の《白孔雀》。白い兎と黒い猫が装飾的な画面構成の金地屏風に、象徴的に描かれた速水御舟の《翠苔緑芝(すいたいりょくし)》。愛らしい雛と人間社会の子どもの姿が重なる小茂田青樹の《雛》。仲睦まじい夫婦の様子を思わせる吉岡堅二の《浮遊》。背筋をぴんと伸ばした猫の視線に身が引き締まる小林古径の《猫》。

本展覧会では、この夏、お子様も楽しめる企画として、約50点の楽しく、愛らしい「いきもの」を集合させて皆様にご紹介します。ぜひご来館いただき、お気に入りの動物を見つけていただければと思います。

出品作品: 狩野芳崖《芙蓉白鷺》、竹内栖鳳《蛙と蜻蛉》、横山大観《叭呵鳥》、
川合玉堂《鴨》、小林古径《猫》、安田靫彦《うさぎ》、小茂田青樹《雛》、
速水御舟《翠苔緑芝》、山口華楊《木精》、上村松篁《白孔雀》、
吉岡堅二《浮遊》、佐藤太清《清韻》、竹内浩一《猿図》、

山種美術館の「美術を通じて社会、特に文化のために貢献したい」という理念のもと、1966(昭和41)年に、全国初の日本画専門の美術館として開館いたしました。以来、今日にいたるまで約半世紀にわたり、近代・現代日本画を中心とした収集・研究・公開・普及につとめてまいりました。

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日本画は、岩絵具や和紙など自然の素材を用いる芸術です。その主題や表現においても自然の美しさや季節感などが大切にされ、自然とともに生きる中で培われてきた日本の伝統的な美意識が反映されています。山種美術館は、日本独特の自然や風土の中で、長いときをかけて磨かれてきた日本画の魅力を、年齢、性別、国籍を問わず、一人でも多くの方にお伝えしていきたいと考えています。また、日本画を未来に引き継いでいくことができるよう、様々な活動を展開してまいりたいと存じます。

21世紀に入り、グローバル化や情報化、技術革新が急激に進むなど、私たちを取り巻く社会や環境はめまぐるしく変化しています。そうした中、人々の心を豊かにする文化や芸術の重要性が見直されるとともに、その一端を担う美術館の果たすべき役割があらためて問われています。当館は、展覧会や教育普及をはじめとするあらゆる活動を通じて、日本画と日本文化の素晴らしさを伝え、人々に感動や発見、喜びや安らぎをもたらすことのできる美術館を目指してまいります。

山種美術館の「美術を通じて社会、特に文化のため大いに貢献したい」という理念を核として、受け継がれてきた精神や共通の価値観を明文化し、山種美術館の基本理念を制定いたしました。また、日本画の素晴らしさを幅広く発信していきたいと考え、従来のロゴに新たなシンボルマーク(デザイン:佐藤卓)を加えました。さらに、かつて実施していた「山種美術館賞」を、新しい時代にふさわしいかたちで再開させた「Seed 山種美術館 日本画アワード 2016」を実施いたしました。本アワードは、今後も継続的に開催する予定で、日本画を未来に引き継ぎ、世界に伝えていく一助になればと存じます。

「美術を愛好される方も、またこれまであまり縁のなかった方にも広く日本画の良さを味わって頂けたらというのが、実は私の願いなのであります」という言葉を残しました。当館では、この創立者の思いを継承するとともに、21世紀における日本画の普及を目指し、展覧会や教育普及活動から、インターネットを活用した情報発信まで、さまざまな取り組みを行っております。

文化や芸術は人々の心を豊かにすることができます。21世紀に入り、グローバル化が進む中、当館では、日本固有の財産である日本画の魅力を国内外に広く発信し、国際社会において少しでも意義のある活動を続けたいと考えております。これからも、親しみやすいテーマによる展覧会から地道な研究まで、多彩な活動を通じて、日本文化・学術の振興と発展につとめてまいりたいと存じます。

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