樂吉左衞門の現代茶陶、佐川美術館

樂吉左衞門 「守破離(しゅはり)」をコンセプトに、美術館としては珍しい水庭に埋設された地下展示室と、水庭に浮かぶように建設された茶室の2つで構成。樂家の伝統と斬新な造形美を表現するべく、樂吉左衞門氏ご自身が設計創案・監修されました。 主に2000年以降に作陶された焼貫黒樂茶碗や黒樂茶碗、茶入、水指などの作品を展示しております。

樂吉左衞門館に併設されている茶室は、樂吉左衞門館同様、樂氏自らが設計の創案を行われました。作家が自らの作品と茶の湯空間を演出

樂吉左衞門
昭和24年、京都市生まれ、陶芸家。日本独自の陶芸・樂焼の家系の十五代目。国際陶芸アカデミー会員。

昭和48年に東京芸術大学美術学部彫刻科を卒業後、イタリア留学を経て昭和56年十五代吉左衞門襲名、現在に至る。

桃山時代に樂茶碗を造りだした初代長次郎以来、400年余りの歴史と伝統を継ぐ樂家十五代当主として、伝統に根ざしながらそこに安住することなく、常に斬新な感覚を示す造形美の世界を表現し続けている。

千利休の「規矩作法 守りつくして 破るとも 離るるとても 本をわするな」から来た言葉

主要所蔵作品
樂焼は桃山時代、茶の湯の大成者・千利休の理想とする茶碗を初代長次郎が形にしたことにはじまり、十五代を数える。樂家は三千家(表千家・裏千家・武者小路千家)好みの茶道具の制作を担う千家十職の中の茶碗師として、400年余りの伝統を営々と守り続けてこられた名門です。

なかでも当代吉左衞門氏は、伝統に立脚しながら斬新な感覚を示す造形美を表現し、国内外で高い評価を得ています。

伝統の規範性に根ざした精神とその規範を打ち破り激しい創造性を開示しつつ変貌する樂氏の世界はまさに「守破離」そのもの。

当館は常に現在進行形の樂吉左衞門作品を観ることができる美術館となります。

茶室
当館茶室は、水没する小間と水の中に浮かぶ広間からなります。広間の床の高さは水庭の水面と可能な限り同じレベルを保つように考えられています。「水面と同じ高さに座す。人は自然と同じレベル、目線で生きていかなければならない」そういった思いが込められています。

エントランス
佐川美術館のエントランスから廊下を通って、水庭の水中に誘われるように階段を降りていきます。

水露地
寄付から水露地に進むと、そこは円筒形のコンクリートの壁に取り囲まれた空間で、足元にも浅く水が張られ、丸く切り取られた天を見上げながら席入りを待つ趣向となっています。飛び石に使用されている石も、アフリカのジンバブエで矢を差し入れて割った面をそのまま生かしています。

盤陀庵
2つの茶室のうち3畳半の小間「盤陀庵」は水庭の下にあります。解体した古民家の煤竹を用いた天井、バリの古材を使用した床柱、越前和紙を張り巡らした茶室内部の壁、躯体のコンクリート壁……それぞれの素材を生かした設えは、非日常的で閉鎖的な空間となっています。コンクリート壁に開けられたスリットや天井に設けられた4つの天窓から採り入れられた外界の光が幻想的な光の影を映し出し、小間の中の光の演出を図ります。

俯仰軒
小間とは対照的に、地上の広間「俯仰軒」(8畳+鞘の間)は、眼前にヨシとヒメガマの植栽された水庭が広がる開放的な空間となっています。水面を抜ける風をそのまま体感できるよう、壁を成しているガラス戸は大きく開け放つことができるように設計されています。

佐川美術館

佐川美術館では、日本を代表する日本画家・平山郁夫先生、彫刻家・佐藤忠良先生、陶芸家・樂吉左衞門先生の作品を収蔵し、各作家の監修による展示空間で作品を常設展示しております。3人の巨匠を一度に鑑賞できるたぐいまれな美術館をお楽しみください。

佐川美術館は、設立母体の佐川急便株式会社が創業40周年記念事業の一環として、 琵琶湖を望む美しい自然に囲まれた近江・守山の地に1998年3月に開館いたしました。 日本画家の平山郁夫氏、彫刻家の佐藤忠良氏、陶芸家の樂吉左衞門氏の作品を中心に展示し、さまざまな文化事業を通じて、芸術・文化の振興と発展に少しでも貢献できればと願っております。 出会いを求めて地域社会をはじめ世界に開かれた美術館を目指しています。

遠くに比叡山・比良山を仰ぎ、目前に琵琶湖をのぞむ風光明媚な地に位置する佐川美術館。

敷地の大部分を占める水庭に浮かぶようにたたずむ3棟の建物は、四季のうつろいのなかで、さまざまな表情を見せます。 自然美との調和にも配慮されたその建築美は多方面で高い評価をいただいています。